のむらしんぼ氏をゲストに迎えた生放送が好評だった
ようだ。
のむら氏は『東大一直線』の絵の下手さを見て、
これなら自分もやれると希望を持ったと言う。
当時そう考えていた漫画家志望者は多かったのだ。
ところがそう考えたほとんどの志望者はプロになれ
なかった。
のむら氏は数少ない成功者の一人だったのである。
今は借金を返すために再起を賭ける漫画家となったが、
そもそも漫画家なんて還暦になって描き続けている者
なんてほとんどいない。
ギャグ漫画家は特に潰れるのが早くて、もって4年
くらいで精神を病んで去っていく。
絵が下手な『東大一直線』だったが、特に知識人に
ウケていたのは他の漫画とは一線を画していた。
これを読んで東大進学を目指したという者も多く、
実際、東大に合格してしまった者も多かった。
子供にウケていたのだが、知識人にもウケるという
のが、わしの漫画の特徴だった。
はっきり言えば、風刺や批評性が強烈だったのだ。
それは『おぼっちゃまくん』にも、『ゴーマニズム宣言』
にも受け継がれていて、作家性は変わっていない。
デビュー作でもう決まっていたのだ。
漫画で長く食っていける作家は10万人に一人と
映画「バクマン。」で言っていた。そんなもんだろう。
いっぱいデビューして、いっぱい終わっていく。
最初から絵が上手い作家は、これ以上はないという
レベルにまで絵が完成し、それを長年維持するのは
難しく、やがて絵が乱れてきて、絵から色気が消え、
スカスカになって人気がなくなることも多い。
わしのように最初が下手だったら、あとは努力の持久力
だけで、上手くなり続けることができる。
絵に関しては永遠に未完の大器でいられる。
これはこれで得かもしれない。
そして、のむら氏によると、弘兼憲史はある日突然、
絵が上手くなったと言っていたらしいから、わしも
ある日突然、ぎょぎょっとするほど上手くなるかも
しれない。
今後はわしのことを「絵の未完の大器」と呼んでくれ。